バグを抱えたまま
皆さん。おはようございます。こんにちは。こんばんは。
「偽透火」久々の登場です。
透火さんは今PSO2が忙しい状況らしいので、代打として私、偽透火が今回はペンを取ろうと思います。
さて、今回は、「バグ」についてです。最近PSO2で幾つかの不具合で大荒れしましたので、開発を擁護する気は毛頭ないのですが、ちょっと物を知らない方が非常に目立つので、ゲーム業界に片足を突っ込んだ経験もある「偽透火」が、ちょっとご説明したいと思います。
「何故ゲーム業界は、バグや不具合を抱えたままでもゲームの発売、稼働が許されるのか。」
ビジネス系プログラマーの人や、他業種からすれば確かに異様な光景です。この風潮を文化と抜かすどっかのクリエイターもどうかと思いますが…
通常、ソフトの製作工程で、仮に10日間でやらなければならない仕事があったとします。それを12日間でやったプログラマーに対して、リーダ-は、「よくやった」と言わなければいけないと思います。
普通の仕事なら、決められた期日に終えるのが優秀かもしれませんが、開発の場合は不確定要素が多くて、なかなか予測しきれないものです。
プログラミングにかかる時間だけでなく、ハードウェアの具合が悪くなったり、ネットワークの不調のための仕事の遅れは往々にあります。
そのような不確定要素とミスを犯す確率と客観視して予測できるケースを立てられる人は、おそらく100人に1人もいないと言われています。 ほとんどのケースが希望的観測が強すぎて、予期しなかった溝にハマってしまうものです。
ビジネス系プログラムは昔からだいたい3割ほど余裕をもってスケジューリングするように指導、調整する。と言われています。
つまり、与えられた開発期間が12ヶ月なら、9ヶ月で完成するように計算して、3ヶ月を確認に充てるように…と、考えるわけです。
最近、ゲーム業界では製作チームの人数の増加という難しい要因があります。80年代~90年代前半位までは3人~10人くらいでひとつのゲームを作りました。
今は15人から20人、大きなチームや看板タイトルなら50人、100人、外部会社とも組むと500人とかそれ以上の例もあります。
人が多くなればなるほどプロジェクト・リーダー(責任者)はスケジュールや予算の予測が難しくなります。 規模が大きくなればプロジェクト・リーダーがみんなを見ることができなくなり、間に誰かが入ることになって、ロスが出てきます。 時には伝言ゲームみたいに、バナナがイチゴになったりもします。つまり、ここにも不確定要素が増えていくわけです。 ですので、もともと小さいチームでしか管理経験がない人がプロジェクト・リーダーをやると、なかなかうまくいきません。 大所帯のマネジメントになれている人がヘッドについてやれば、様々な予測がつくはずです。
当然それ以外にも、ゲームの思い入れを継続し、チームを長期間リードしていくエネルギーも求められます。
昔はまだしも、最近は大所帯ですので50人100人にも及ぶ人を1年間(以上)継続的に、かつ方向性を持って引っ張っていける人というのは、確率的にいっても少なくなるでしょう。
ところが現在はそういった環境が主流になってきています。そんな事情もあって、スケジュールの遅れが表面化してきているのです。当然スケジュールが遅れると、予算も掛かりますし、クオリティにも影響は現れます。
最近はお金や納期までの時間が無いからという理由で厳密なデバッグをしないケースも非常に多いです。
致命的なバグが出たらデバッグに掛かる費用以上に金がふっとぶことを営業や経理も理解していないですし、人命に関わる、人体に有害、社会的な被害が甚大、ゲーム機やデーターに100%致命傷を与える、プレイヤーの腕に関係なく100%確実にフリーズ、データー破損する。というものでもなければ回収は無い。という常識すらまかり通るのがゲーム業界の怖さですし、原因がソフト側にあるとしても、それはどのくらい発生してるかという問題もあるでしょうし、バグが含まれたまま出荷され、会社の規模にもよりますが、回収交換対応が遅れる多くのケースはこれが理由です。
検品などの「確認作業」は売上をアップさせる作業ではないですし、売上アップの前にコスト削減のほうが急務というのが現在の風潮です。
一番人材がそろって条件も良かったプロジェクトの前提で計画を立てる。しかし常に規模が大きくなるので、人材がそろわない。時間も足りない。企画が決まらない。だから失敗し、不具合を抱えたまま作品が世に出る。取り繕うことに成功したモノは良ゲー、失敗すると糞ゲー。こう考えるとゲーム業界は本当に怖い世界です。どっちにころんでも泣きを見るのは小売と消費者です。
確かに狙った内容のものを狙った時期に出せれば、競争相手も少なくなるでしょう。クオリティが下がってでも早く作ったほうが、ビジネスとしては安全だと思います。
スケジュール、クオリティ、コストのうち、すべてを満足がいくように作るのは無理ですから、コストとスケジュールを優先するのなら、もう少しゆとりのあるスケジュールを組んでいただければと思います。
と、いう訳で、バグを抱えたままでもゲームが販売される理由は、
1、納期と予算が最優先のため
2、プロジェクト・リーダー(責任者) のスキルの問題
と考えられます。
でも世の中。例えば、エアコンやカーナビが動かない不具合を抱えていたって、売れるクルマがあるんですが、どうしてそれは許されるのでしょう?