第1話 チーフが往く

MARZ、現る

俺は、火星圏直轄の特捜機動部隊…通称「MARZ」に所属する者。 …固有の名前など俺には無い…必要ではないからな。
与えられた任務を果たす為、超長距離への転送を可能とする技術、「定位リバースコンバート」によって任地へ赴いた。

空間に自身が溶け込んでいく感覚…そして唐突に訪れる落下感…どうやら転移ポイントは空中らしい。
上下の感覚は既に掴んでいる、着地へ望む体勢も完璧だ。
一瞬の浮遊感の後、急激に下へ引っ張られる感覚…重力の井戸へ放り込まれ、身体は大地へ遷移していく。

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そして俺は、来るべき地へ足を踏み入れたのだった。


任地か、それとも迷い人か

自身の感覚に問題ない、一瞬…五感の認識に違和感を覚えたが、それも正常へ戻った。
転移プロセスが完了し、自身の感覚による空間認識が再開され、俺は立ち上がり周囲を見渡した。
…? おかしい、周囲に一切の建造物がない。驚きと共にサーチ距離を限界まで伸ばすが反応は認められなかった…
センサーや計器に異常はない。無論、自身の五感も…しかし、一切の建造物がないというのは有り得ない。

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困惑する己と急変する事態

移動すればなにか掴めるかもしれない…そう思い、俺は周囲の探索を開始した。

程なくして現れたのは巨大な生命体…いや違う!
体長は…1m弱…だと?!
目の前に現れた猿のような生命体の大きさをスキャンした結果、俺はその数値に驚きを隠せなかった。

現在、俺の搭乗しているバーチャロイド「テムジン」系列の機体はサイズ的に標準レベルとはいえ、全高40mはある巨大な人型戦闘ロボットなのだ。
そして今、俺の目の前にいる猿型の生命体は、この機体との体格差から判断しても半分以下とはいえ、予想では10m以上はある…はずなのだが…
何度スキャンを繰り返しても、結果は変わらず「体長1m弱」を示し続けた。

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その結果は同時に、バーチャロイドに搭乗している俺ごと、機体そのものが人間と同等のサイズにまで縮んでいるという事実を突き付けてきた。
さらに最悪な事に、目の前の猿は俺を敵と認識したのか…長い腕を振りかぶって機体を殴り始めたのだった。